ニキとヨーコ [書籍紹介]
おはようございます。
本日もご来訪ありがとうございます。
私こと不肖讃岐人の住む地域では、夜もよく晴れていて風も無かったため、今朝はとても冷え込んでいます。
さて、今回はいつもとは趣向を変えて書籍の紹介です。
黒岩有希(くろいわ ゆき)著「ニキとヨーコ 下町の女将からニキ・ド・サンファルのコレクターへ」(NHK出版 2015年)です。
本書は「ニキ美術館」(栃木県那須町(現在は閉館))の設立者のヨーコ増田静江(よーこ ますだ しずえ:1931(昭和6)~2009(平成21))の伝記です。
ニキ・ド・サンファル(1930~2002)とは、フランスの現代芸術家で、「射撃絵画」、「魔女」や「ドラゴン」をモチーフにした作品、「ナナ」シリーズなどが有名です。特に日本の遮光器土偶をカラフルにしたような「ナナ」シリーズは当時の女性解放運動の盛り上がりとの関連もあり、ニキを象徴する作品と位置付けられているそうです。
この伝記によれば、ヨーコ増田静江は芸術とは無縁の生活を送っていましたが、偶然ニキの作品と出会い、熱烈なファンになり、公私の枠を超えた友情を育み、やがてニキの美術館まで建ててしまったそうです。事実だけを抜き出すと簡単ですが、そこに至る過程は波乱に富み、私、目が離せず本書を一気に読んでしまいました。
著者の黒岩さんはイラストレーターで、ヨーコ増田静江の息子さんの奥さんでもあり、ヨーコ増田静江の死後は「ニキ美術館」の館長をされていたそうです。この伝記、もとは「ニキ美術館」のホームページ上に連載されていたものを、作者の黒岩さんが加筆し出版したものであります。
ここで私、黒岩さんのことを「イラストレーター」、「ヨーコ増田静江の息子さんの奥さん」、「ニキ美術館の館長」と紹介しました。では本当の黒岩さんはどこにいるのでしょう?
このように、人間はたいていの場合、何か外的な基準に基づいて規定されてしまっています。それは男であるとか女であるとか、大人であるとかこどもであるとか、白人であるとか黒人であるとか東洋人であるとか、誰々の娘だとか誰々の妻だとか、誰々の父だとか、そういった諸々の何かです。
そして、単に規定されるだけではなく「外的な何か」は生き方を支配します。その中で本来の輝きを失い、人は自分ではない何かを演じ続ける息苦しさの中に埋没してしまうのでしょう。
この本は、そのような中で傷つき、闘った二人の魂が出会い、響きあい、やがて全てが一つの世界、それはニキが生涯をかけた「タロット・ガーデン」にも通じるところでありますが、まさにタロットの「世界」のような調和と喜びに満ちた世界へと至る道程の物語であるように思いました。
ニキと出会い「増田(黒岩)静江」という名を使うことをやめ「二樹洋子(ニキ・ヨーコ)」または「ヨーコ増田静江」と名乗るようになったことや、ヨーコの夫の増田通二(ますだ つうじ:1926(大正15)年~2007(平成19)年、パルコ元会長)のデザインした「ニキ美術館」の内装のエピソードが、それを象徴しているように思えました。
私の拙い説明では分かりにくいと思いますので、興味を持たれた方は、ぜひ手に取って読んでみて下さい。
あと、すでに皆さんご存知でしょうが、閉館したニキ美術館のコレクションと世界中にあるニキ作品とを集めた特別展「ニキ・ド・サンファル展」が東京の国立新美術館で12月14日まで開催されています。今後しばらくは、国内でこのように大規模にニキの作品を集めた展覧会は行われないと思いますので、こちらもあわせてご覧いただければと思います。
最後におわびとお願いです。近頃は皆様のブログを訪問できたりできなかったりしております。訪問できる時に読ませていただきますので、よろしくお願いします。その際、まとめて読めた記事それぞれにniceをつけることがございます。その際は履歴が複数残りますのでご了承ください。
それでは!!
~外部リンク~
ニキ美術館
http://niki-museum.jp/contents/
国立新美術館
http://www.nact.jp/
本日もご来訪ありがとうございます。
私こと不肖讃岐人の住む地域では、夜もよく晴れていて風も無かったため、今朝はとても冷え込んでいます。
さて、今回はいつもとは趣向を変えて書籍の紹介です。
黒岩有希(くろいわ ゆき)著「ニキとヨーコ 下町の女将からニキ・ド・サンファルのコレクターへ」(NHK出版 2015年)です。
本書は「ニキ美術館」(栃木県那須町(現在は閉館))の設立者のヨーコ増田静江(よーこ ますだ しずえ:1931(昭和6)~2009(平成21))の伝記です。
ニキ・ド・サンファル(1930~2002)とは、フランスの現代芸術家で、「射撃絵画」、「魔女」や「ドラゴン」をモチーフにした作品、「ナナ」シリーズなどが有名です。特に日本の遮光器土偶をカラフルにしたような「ナナ」シリーズは当時の女性解放運動の盛り上がりとの関連もあり、ニキを象徴する作品と位置付けられているそうです。
この伝記によれば、ヨーコ増田静江は芸術とは無縁の生活を送っていましたが、偶然ニキの作品と出会い、熱烈なファンになり、公私の枠を超えた友情を育み、やがてニキの美術館まで建ててしまったそうです。事実だけを抜き出すと簡単ですが、そこに至る過程は波乱に富み、私、目が離せず本書を一気に読んでしまいました。
著者の黒岩さんはイラストレーターで、ヨーコ増田静江の息子さんの奥さんでもあり、ヨーコ増田静江の死後は「ニキ美術館」の館長をされていたそうです。この伝記、もとは「ニキ美術館」のホームページ上に連載されていたものを、作者の黒岩さんが加筆し出版したものであります。
ここで私、黒岩さんのことを「イラストレーター」、「ヨーコ増田静江の息子さんの奥さん」、「ニキ美術館の館長」と紹介しました。では本当の黒岩さんはどこにいるのでしょう?
このように、人間はたいていの場合、何か外的な基準に基づいて規定されてしまっています。それは男であるとか女であるとか、大人であるとかこどもであるとか、白人であるとか黒人であるとか東洋人であるとか、誰々の娘だとか誰々の妻だとか、誰々の父だとか、そういった諸々の何かです。
そして、単に規定されるだけではなく「外的な何か」は生き方を支配します。その中で本来の輝きを失い、人は自分ではない何かを演じ続ける息苦しさの中に埋没してしまうのでしょう。
この本は、そのような中で傷つき、闘った二人の魂が出会い、響きあい、やがて全てが一つの世界、それはニキが生涯をかけた「タロット・ガーデン」にも通じるところでありますが、まさにタロットの「世界」のような調和と喜びに満ちた世界へと至る道程の物語であるように思いました。
ニキと出会い「増田(黒岩)静江」という名を使うことをやめ「二樹洋子(ニキ・ヨーコ)」または「ヨーコ増田静江」と名乗るようになったことや、ヨーコの夫の増田通二(ますだ つうじ:1926(大正15)年~2007(平成19)年、パルコ元会長)のデザインした「ニキ美術館」の内装のエピソードが、それを象徴しているように思えました。
私の拙い説明では分かりにくいと思いますので、興味を持たれた方は、ぜひ手に取って読んでみて下さい。
あと、すでに皆さんご存知でしょうが、閉館したニキ美術館のコレクションと世界中にあるニキ作品とを集めた特別展「ニキ・ド・サンファル展」が東京の国立新美術館で12月14日まで開催されています。今後しばらくは、国内でこのように大規模にニキの作品を集めた展覧会は行われないと思いますので、こちらもあわせてご覧いただければと思います。
最後におわびとお願いです。近頃は皆様のブログを訪問できたりできなかったりしております。訪問できる時に読ませていただきますので、よろしくお願いします。その際、まとめて読めた記事それぞれにniceをつけることがございます。その際は履歴が複数残りますのでご了承ください。
それでは!!
~外部リンク~
ニキ美術館
http://niki-museum.jp/contents/
国立新美術館
http://www.nact.jp/
2015-11-29 05:00
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コメント(2)
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上旬に上京した時、ニキ展を見て大変感動しました。その前の週に箱根の野外彫刻の森でニキの作品を見たのがきっかけです。この本は読んでいませんでしたので詳しい解説ありがとうございました。
by JUNKO (2015-11-29 22:19)
JUNKOさん、おはようございます。
JUNKOさんも展覧会をご覧になっていらっしゃいましたか。
私は逆に彫刻の森美術館にニキの作品があることを知りませんでした。(彫刻の森美術館にも行ったことがありません。)
暖かくなったらロマンスカーに乗って行ってみたいです。
コメントありがとうございます。
by 讃岐人 (2015-11-30 06:17)